加齢性難聴は進行性の病気のため、時間とともに症状が進行します。聞こえの悪化に気づいたら、早めの対応が大切です。高齢者の多くが直面する問題として、難聴がコミュニケーション障害の原因となり得ることも指摘されています。

「難聴を放置すると、周囲とのコミュニケーションが減少して社会的に孤立し、認知機能が低下するリスクも高まります。認知症発症のリスクも高まるため、難聴は早めの発見と補聴器装用などの適切な対応が重要です。健康寿命を延ばすためにも、ささやき声程度の音の大きさが聞こえる30dBの聴力を補聴器装用などで維持するようにしましょう」(小森医師)

 日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会でも現在、「80歳で30dBの聴力維持」を目標とする「きこえ8030運動」を提唱しています。

補聴器には適切な調整と訓練が必要

 補聴器は、眼鏡のように単に装着するだけでは聞こえるようにはなりません。適切な調整と訓練が必要です。補聴器を使用する前にかならず、耳鼻咽喉科で診察と聴力検査を受けることも大切です。聞こえの悪い人が適切に補聴器を使用するための指導をおこなうのは補聴器相談医です。補聴器相談医による診断後、補聴器適合に関する診療情報提供書が発行されますが、補聴器購入で医療費控除を受ける際にも、この診療情報提供書が必要になります。

 補聴器を使いこなすには一定期間の訓練が必要です。聴覚レベルに合わせ、言語聴覚士や認定補聴器技能者による微細な調整のもと、最初は目標値の70~80%の音量レベルから使い始め、徐々に音量を上げていきます。

「朝起きてから夜寝るまで補聴器を装着しながら慣らしていきますが、難聴の人は静かな環境に慣れてしまっているため、つけ始めはうるさく感じます。最初の1カ月が一番大変です。それを越えると慣れていくケースが多いです」(小森医師)

 聞こえの改善が思わしくない場合には、文字の視覚情報も併用して補聴器で言葉を聞く「聴覚リハビリ」によって、聞こえの改善が進むケースもあります。

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補聴器で改善がみられない場合などは「人工内耳」を検討