補聴器の調整や訓練でも聞こえの改善がみられない場合や、高度・重度の難聴の場合には、人工内耳を植え込む手術が検討されます。人工内耳は基本的に、平均聴力が70dB以上で、補聴器を使用しても言葉の聞き取りが50%以下の場合に適用されます。現在、人工内耳を植え込む手術は大学病院など特定の病院でのみおこなわれています。

「人工内耳は近年、目覚ましく進化していて聞こえ方の明瞭度も高まり、製品もより使いやすく改良されています。加齢性難聴で補聴器での聞き取りが悪くなっても、人工内耳で聞こえが改善するケースも多くあります」(小森医師)

耳鳴り治療は病気を理解し、意識を外すこと

 加齢に伴う耳のトラブルには「耳鳴り」もあります。日本人全体の約10~15%が耳鳴りを経験しており、65歳以上の高齢者に限ると約30%が耳鳴りを抱えていると考えられています。とくに難聴をもつ人では約7割が耳鳴りを経験しています。

 高齢者の耳鳴りの多くは加齢性難聴が原因です。加齢により高音域など外部からの音が聞き取りにくくなると、脳は音を認識しようとして感度を上げ、それが刺激となって、本来はないはずの音を作り出してしまいます。これが耳鳴りの原因です。

 耳鳴りの診断には問診、耳の診察、聴力検査、画像検査などがおこなわれます。耳鳴り治療では、耳鳴りの音に慣れること、耳鳴りの音が常に聞こえていても気にならない状況を目指します。

 治療には耳鳴り再訓練療法(TRT)の一つである音響療法や補聴器が利用されます。音響療法は、耳鳴りよりも少し小さい音を流し続けることで、耳鳴りから意識をそらす治療法です。同時に、耳鳴りについて理解する「教育的カウンセリング」もおこなわれます。

「耳鳴りで受診する人は病気への不安感が強く、それが症状を悪化させていることもあります。耳鳴りの半分は病気ではなく生理的なものです。耳鳴りに対する理解を深めることで安心し、気にならなくなる人も多いです」(小森医師)

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難聴による耳鳴りの治療には補聴器が有効