国内で年間2万人程度が発症している脳腫瘍。大きく分けると悪性と良性がありますが、さらに細かく分類すると150以上もの種類があります。腫瘍が発生した部位によって、さまざまな症状が表れるため、別の病気と間違われることもあり、診断までに時間がかかることも少なくありません。脳腫瘍の種類別の症状や治療について解説します。
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本記事は、2024年2月下旬に発売予定の『手術数でわかる いい病院2024』で取材した医師の協力のもと作成し、先行してお届けします。
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脳腫瘍は脳細胞や脳を覆う膜、脳神経などから発生します。悪性と良性があり、3割程度が悪性です。悪性の場合、増殖のスピードが速く、周囲の組織に広がっていくため、なるべく早く治療する必要があります。一方良性の場合は、増殖のスピードがゆるやかなので、症状がなければすぐには治療をせず、経過を観察するだけでよいこともあります。
症状が進むと、朝起きたときに頭痛や吐き気が出る
脳は部位によってそれぞれ異なる機能があります。このため、腫瘍ができた部位によって、表れる症状も異なります。しかし、共通して出やすい症状もあります。熊本大学病院脳神経外科教授の武笠晃丈医師はこう説明します。
「腫瘍が大きくなってくると、頭蓋骨内部の圧力が高まり、頭痛や吐き気が起こります。脳腫瘍による頭痛の特徴としては、朝起きたときに症状が強く出やすいということです。一般的に寝ている間は、頭蓋骨内部の圧力が高くなりやすいためです」
頭蓋骨内部の圧力が高まることによって症状が出るのは、一般的には腫瘍がかなり増大したケースです。腫瘍ができた部位によって表れる症状(局所症状)も腫瘍が大きくなるほど出やすくなりますが、小さくても症状が出ることがあります。
局所症状には、視野障害(片側の視野が欠ける、ものが二重に見えるなど)、言語障害(うまく話せない、言葉を理解できないなど)、聴力の低下、めまい、てんかん発作、手足や顔のまひ、記憶力や認知機能の低下、集中力の低下、性格の変化(怒りっぽくなるなど)、左右を判断できなくなるといった症状があり、実にさまざまです。
こうした症状は、ほかの病気で起きることもあります。例えば聴力が低下した場合は通常耳鼻科を受診します。そこで、突発性難聴と診断されたにもかかわらず、実は良性脳腫瘍の一つである「聴神経鞘腫(しょうしゅ)」であったということもあります。腫瘍が大きくなって聴力がさらに低下すると、腫瘍に気づいたときに治療をしても元通りにはならないのです。武笠医師は次のようなケースを経験したことがあると言います。