派閥を重視しすぎる
ただし、現在、岸田文雄首相が派閥に頼る政治をしているせいで、派閥が本来の力以上の影響力を持っている面もあります。第2次安倍政権では、初期には石破茂氏や野田聖子氏ら無派閥の議員を党三役につけるなど、あまり派閥に頼らない政治をしていました。しかし、二階俊博氏を幹事長に据えたころから派閥の重用が目立つようになった。党内を統御するのに派閥を使ったほうが楽だからです。そして、菅義偉前首相は派閥の後ろ盾がないために再選を断念し、岸田首相は完全に派閥に依存して政権運営をしています。派閥を重視しすぎている現状は、是正する必要があるでしょう。
「政治と金」を巡っても極端な意見が目に付きます。「政治献金をすべて公開しろ」とか、「政治資金パーティーを禁止しろ」とか言っている人がいますが、民主主義の首を絞める意見だと思います。何の見返りがなくても、応援したい政治家にお金を出す。個人献金は政治参加の一つの方法です。いまは年間5万円以下の寄付者であれば政治資金収支報告書への記載義務がありません。氏名と住所がネットで全部公開されてしまえば、献金なんてできなくなります。政治資金パーティーは本来、パーティー券付きの献金ですが、企業・団体献金の抜け道に利用されているなど、是正が必要な点もあります。ただ、ゼロか100かのような議論はふさわしくありません。
こうした事件があると、政治家は悪いことばかりやっていると感じる人もいるかもしれません。しかし、まっとうな政治家はたくさんいます。朝早くから夜遅くまで、会合に出席したり、政策の勉強をしたりして、休みになったら選挙区に帰り、地元活動をしている議員がほとんど。落選による失業のリスクもある。本当に頭が下がります。法を犯した議員が罰せられるべきなのは当然ですが、ネット上の極端なバッシングに流されることなく、冷静にこの問題を見る必要があるでしょう。
(構成/編集部・川口穣)
※AERA 2024年1月29日号