現職国会議員の逮捕にまで発展し、政界を揺るがせている自民党派閥の裏金事件。問題の根底には何があるのか。中央大学法学部教授・中北浩爾さんに聞いた。AERA 2024年1月29日号より。
【写真】強制捜査の夜にもパーティーを開いていた女性議員はこちら
* * *
この問題を「派閥の弊害」とか、「令和のリクルート事件」とかいう人がいますが、本質的に違います。安倍派などが旧来からの悪習をやめることができなかったという、「情けない事件」です。
安倍派では22年にパーティー券収入を裏金として還流する運用を取りやめるといったん決めながら、「議員から泣きが入って」、結局従来通りのやり方を踏襲したと報じられています。政治資金収支報告書に記載して堂々と活用すればいいのに、そうしなかった。裏金があると便利だからでしょう。悪習だとわかっていながらやめられなかった安倍派の情けなさを象徴する事件なんです。権勢を誇っていたはずの政治家のリーダーシップの欠如こそが問題です。
政治活動にお金がかかるのは事実ですが、裏金は不可欠ではありません。裏金作りが自民党のすべての派閥に蔓延していたわけでもない。なので、原因が派閥というシステムにあるとの意見にも賛成できません。もちろん、今回の事件は許されることではありません。法をつくる人間が法を犯し、国民にはインボイス制度のような面倒な制度を押し付けながら、自分たちは金をきちんと管理していない。法によって裁かれるのは当然です。ただ、派閥を一切なくせという意見は極論です。
かつての自民党には、派閥が多額の金を集め、実弾のようにそれをばらまいて総裁選の票を買っていた時代がありました。当時と比べると、派閥の力はかなり弱くなっています。派閥の年間の収入は2億~3億円程度です。組織のお金と考えるとそれほど大きな額ではない。旧来の派閥の弊害はすでに相当程度減っているとみるべきです。派閥に改善すべき点があることは確かですが、350人超の国会議員を抱える自民党に党内グループがあるのは当然です。多様な党内グループが切磋琢磨し合うことは、質の高い政治を行う上で必要なことです。