長女のバールちゃん(6歳)が父親であるサギさんの解放を涙目で訴えている様子(写真:ジョナサン・デケル・ヘンさん提供)

 昨年10月7日まで、私たちはイスラエル軍がキブツに数分以内に駆けつけてくれると信じていましたが、システムは崩壊しました。その日の朝、約200人の重武装したハマスのテロリストが「ニル・オズ」に侵入し、少なくとも40人のメンバーを殺害し、さらに12人のタイ人労働者を残酷に殺害。同時に、彼らは私の息子を含む80人の人質を誘拐しました。

息子のサギさんを誘拐されたイスラエル国立ヘブライ大学の歴史学(東欧史)教授のジョナサン・デケル・ヘンさん(写真:ジョナサン・デケル・ヘンさん提供)

国家的失敗の犠牲者

 ガザの国境付近の多くのキブツは、息子がいたニル・オズと同じような運命をたどりました。あの悲惨な日を迎える前は、キブツにいるほとんどの人が平和の支持者だったという恐ろしい皮肉に、衝撃を受けずにはいられません。

 すべての人質は、巨大な国家的失敗の犠牲者です。イスラエル政府が自国民を守り、誰一人取り残さないという約束を果たすかどうか。イスラエルがガザで軍事作戦を継続していることを考えると、人質の救出はこれまで以上に急務です。

 先日、ホワイトハウスでバイデン米大統領とブリンケン米国務長官と面会した際、人質全員の解放に向けて全力を尽くすと誓ってくれました。バイデン大統領は、自らの政治的な危機というリスクのなかでも、イスラエルにとって素晴らしい友人でした。分裂したアメリカ議会は、イスラエルの人質を帰国させることに関しては稀(まれ)に見る連帯を示しています。

 日本は北朝鮮に民間人が拉致された経験があり、家族がどれほどの苦しみを味わったかを知っています。私は、ガザから誘拐されたイスラエル人が早く帰ってくることを願っています。

 この戦争は数週間から数カ月続くかもしれない。この先、人質が生きて帰ってきて、いつの日か隣人との和平が再び可能になるために、人質たちは生きて帰ってこなければなりません。Bring them home!(人質となった人たちを連れて帰ろう)

(ヘブライ大学教授 ジョナサン・デケル・ヘン、イスラエル在住)

AERA 2024年1月29日号

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