10月7日にハマスがイスラエル人を殺害し、人質に取ってから100日が過ぎた。息子を誘拐されたヘブライ大学の教授が本誌に手記を寄せ、一日も早い解放を訴えた。AERA 2024年1月29日号より。
【写真】父親であるサギさんの解放を涙目で訴える長女のバールちゃん
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136人のイスラエル人人質が生命を脅かす状態に置かれたまま100日が過ぎました。人質の中には、私の息子、サギ(35)がいます。
息子は英国とイスラエル関係のNPOに勤務し、妻のアヴィタル(33)は農業のマーケティング会社で働いています。二人には、3人の娘、バール(6)、ガーリ(2)、そして息子が人質に取られている間に生まれたシャハル(生後1カ月)がいます。
8週間前に約100人の人質が解放されたことは私たちを興奮させましたが、残りのグループ(主に男性)の人質のことを心配しています。時間が経つにつれて、彼らの運命が優先されなくなるのではないか、と。
息子の目撃情報も
解放された人質の何人かは、1カ月以上前に私の息子が生きているのを目撃しました。いまや、イスラエルとその友人たちは、他のすべての人質とともに、息子の安全な帰還を確保しなければならない。ガザ地区における将来の平和の可能性は、人質全員が生きて帰国できるかどうかにかかっています。
10月7日は、イスラエル史上最悪の治安上の失敗となりました。ハマスは1200人以上を虐殺し、ほとんどが民間人でした。人口比で考えると、アメリカでは約4万4500人の命に相当し、2001年に起きた9.11のアメリカ同時多発テロによる死者の約15倍に相当します。
息子家族がいたイスラエル南部の集団農場キブツ「ニル・オズ」は、1950年代半ばにイスラエルの国境を示すために設立されました。2005年にはイスラエルがガザ地区から撤退し、暴力は減少するはずでしたが、07年にハマスがクーデターを起こし、イスラエル人の殺害が懸念されました。14年にはイスラエルがガザの周囲に突破不可能なフェンスを建設しました。