JR上総一ノ宮駅

一宮町だけの問題ではない

 町が過去に移住者に行ったアンケートでは、約4割が「通勤の利便性」を理由に挙げている。サーフィンや自然の豊かさも上位に入ったが、前提に通勤の利便性があってこそ選ばれたというのが町の見解だ。町長が「生命維持装置」という言葉を使う理由がここにある。

 町民からはJR側に抗議を求める声も届いているという。

 上総一ノ宮駅から都心に通勤する男性は、「たかが数分や十数分のロスだと思うかもしれませんが、通勤する朝の数分って大きいですよね。特に通勤時間が長くて、電車の本数も少ない土地に住む僕らにとっては……。『東京へのアクセスが良い』と言えなくなったら、移住にもマイナスの影響が出ると思います」と話す。

一宮町のポスター(撮影/國府田英之)

 町長の発言に対しては、SNSなどで「小さな町の首長が何を勝手なことを言っているんだ」などの批判も少なくない。それは町長も承知している。だが、これは一宮町だけの問題ではないとして、こう訴える。

「日本の自治体の多くが衰退局面にある中で、この小さな一宮町は踏みとどまっています。東京一極集中の状況で、外房で唯一、なお生命力を有する衛星都市としての役割を果たしており、今後も外房の重点都市であり続ける自覚を持って街をつくっていかねばなりません。その生命線である通勤快速などの電車を、乗車率を改善したいという理由だけで廃止していいのか。沿線の自治体や関係者と話しながら、一緒に進んでいくのが鉄道会社のあるべき姿ではないでしょうか。これは自治体が一方的に苦難を被るような話で、一宮町だけの問題ではない。今後の日本のデザインをどう考えていくのかという、非常に大きな問題だととらえています」

  馬淵町長は引き続き、他の自治体と“共闘”し、JR東に要望を続けていく構えだ。

(AERA dot.編集部・國府田英之)

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