東京駅と千葉市内を結ぶ京葉線の混雑緩和を理由に、JR東日本は今年3月のダイヤ改正で朝と夕方以降の通勤快速などの廃止を表明した。だが、それに対し海辺の小さな町の町長が猛反発している。「町にとっての生命維持装置を外すに等しい暴挙。自治体を殺していくことになる」と訴える。なぜ町長はここまで強い言葉でダイヤ改正に反対し撤回を求めるのか。発言の“真意”を聞いた。
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千葉県一宮町。九十九里浜の南端にある小さな町はサーフィンの聖地として有名で、「釣ヶ崎海岸」は2021年の東京五輪でサーフィンの競技会場となり脚光を浴びた。
平日の午後、駅から歩いて砂浜に出ると、雄大な太平洋が眼前に広がる。駐車場には県内だけではなく県外ナンバーの車が数十台も並び、多くのサーファーたちが波と戯れていた。
この町にある「JR上総一ノ宮駅」に停車する外房線の通勤快速や快速は京葉線に直通しており、午前6時8分発の快速、7時発の通勤快速は東京駅に80分前後で到着する。始発駅のため、座って通勤できるメリットもある。
海や自然に囲まれた豊かな環境ながら、都心へのアクセスが良い点をPR。30~40代を中心に移住先として人気で、近年も転入者が転出者を上回り続けている。
「国立社会保障・人口問題研究所」の地域別の人口推計によると、一宮町周辺の自治体では2020年を100とした場合、2050年には人口が半減したり、大幅に減少する自治体が大半だ。だが、一宮町は2050年で「94・9」と外房地域で唯一、ほぼ横ばいを保っている。地方活性化の成功例と言えるだろう。