若狭弁護士は当初、「在宅でもいい。安倍派の幹部一人を起訴できれば合格点」と語っていたが、今回の幹部の立件は断念したとされる検察の捜査について、
「“銅メダル”にも達しないレベル。国民からの批判は免れない」と厳しく指摘する。ただ、池田議員の逮捕や大野、谷川議員らの立件を踏まえ、「入賞レベル」とした。
若狭弁護士は、特捜部が安倍派幹部の立件を見送った背景に、過去の事件があるのではと見ている。
「私が現役だった2004年に、担当した日本歯科医師連盟の1億円闇献金事件で、元内閣官房長官で自民党元衆院議員の村岡兼造氏を在宅起訴しました。二審・東京高裁は有罪になりましたが、一審・東京地裁では無罪でした。検察としては、かなりショックな出来事でした。それもあって今回も相当慎重になったのでは」
今回の裏金問題では、特に安倍派の「5人衆」に注目が集まったが、キックバックが明らかになったり、疑惑が報じられたりしている議員は他にもいる。
閣僚経験者をあげても、元五輪相の橋本聖子氏は自身の裏金について「2057万円だったと思う」と明らかにし、「議員を続けていく中で責任を果たしたい」と議員辞職を否定した。同じ元五輪相の丸川珠代氏にも700万円の裏金疑惑が指摘されたが、取材には応じず、去っていく様子がテレビ局のニュースで報じられた。安倍派の事務総長経験者で元文部科学相の下村博文氏も約500万円との疑いが出ている。
報告義務ない政策活動費、二階氏に5年で約50億円
また、今回の特捜部の動きについて、
「全国から人が集められていたので、もしかしたら裏金問題以外に何か捜査をしていたのではないでしょうか。ちなみに、政策活動費については約20年前に、特捜部内で問題視されていたので、動きがあっていいと思います」
との見方を示した。
政策活動費とは、政党が議員に支出し、その使い道を政治資金収支報告書などで明らかにしなくてもいい金だ。一日で億単位が動くこともあり、各政党のうち自民党が約456億円と最多額となる。なかでも、自民党の幹事長を二階俊博氏には、5年間にわたって約50億円が支出されていることが朝日新聞の集計で明らかになっている。
若狭弁護士は、
「繰り返しになりますが、特捜部は裏金問題以外でも動いているはずなので、今年の通常国会後に期待します。長期間で見て、検察が『やりきった』と言えるところに落ち着けたらいいと思っています」
と期待を込めた。
(AERA dot.編集部・板垣聡旨)