どうにかしたい!忙しさ起因のネガティブ感情(イラスト:サヲリブラウン)

 作詞家、ラジオパーソナリティー、コラムニストとして活躍するジェーン・スーさんによるAERA連載「ジェーン・スーの先日、お目に掛かりまして」をお届けします。

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 さあ、2024年が始まりました。今年はどんな年にしましょうか。「どんな年になりますか?」と尋ねられると、楽観的ではいられません。戦争が終わる兆候は、残念ながらなさそうですし。

 世界情勢を他人事と思っているわけではありませんが、2023年は日々の忙しさに追われ、募金以外の行動を起こす気力が漲らず、自分の意見を固めるためのリサーチや熟考をする時間もとれず、己の無力と意気地のなさを恥じる気持ちに度々なりました。無責任なのではないかと、後ろめたさにも苛まれました。多忙を言い訳にしているような負い目を何度も感じました。国内の諸問題に対してもそう。

 無用な対立を避けたい一心で、SNSでは様々な立場を明言せずにいます。それでいいのだと自信を持てる日もあるし、情けないのではないかと、しょげる日もあります。

 2024年も、こういった感情にとらわれる日は少なくないでしょう。できる範囲のことをやるしかないとわかっていても、ならば自分は「できること」を十分にやれているのかと、自問してしまう。

 友人が2022年末に配信された私のポッドキャスト番組を聴いたところ、「2022年は忙しすぎたから、来年は仕事を減らして時間を作る」と言っていたそうです。結果は散々。2022年以上に忙殺されてしまいました。やりたい仕事に思う存分没頭できたから後悔はないのに、なぜこんな気持ちになるの? 忙しいと後ろめたくなるって、ちょっと変ですよね。

 いや、待てよ。これは私に限ったことではないのかも。隙間時間をどれだけ有効活用するか?が雑誌の特集になるくらいですから、やるべきことができていない、もっと時間を有効活用できるはず、というオブセッションに悩まされている人は大勢いるはず。

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ジェーン・スー

ジェーン・スー

(コラムニスト・ラジオパーソナリティ) 1973年東京生まれの日本人。 2021年に『生きるとか死ぬとか父親とか』が、テレビ東京系列で連続ドラマ化され話題に(主演:吉田羊・國村隼/脚本:井土紀州)。 2023年8月現在、毎日新聞やAERA、婦人公論などで数多くの連載を持つ。

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