NHK朝の連続ドラマ小説「まれ」も、いよいよ佳境に入ってきました。
「まれ」の見どころは、ストーリーもさることながら、能登の豊かでのびやかな自然風景にあります。
今回は、ドラマやオープニングになじみの深い「白米千枚田」「間垣の里」「珠洲の塩田」をご紹介。
「白米千枚田」など日本初の世界農業遺産を抱える能登の最大の魅力は、大自然と共に生きてきた日本の原風景が、今に生きていることにあります。
あまりなじみのなかった方もぜひ、この機会に能登を旅してみてはいかがでしょう!

オーナー制度があり年間2万円で田んぼを一つ持てる白米千枚田。オーナーには輪島出身の著名人も!
オーナー制度があり年間2万円で田んぼを一つ持てる白米千枚田。オーナーには輪島出身の著名人も!

田んぼの数は1004枚!「白米千枚田」

眼下に海を見下ろす山の斜面に、小さな水田が美しい模様を描きながら、幾重にも連なっている──。
「まれ」のオープニング(ロングバーション)に登場するのが、能登を代表する景観の一つである「白米千枚田(しろよね・せんまいだ)」という棚田です(オープニングでは数秒ですが、雪景色の白米千枚田が見られます)。
この地域は、崖が切り立っており、昔から地滑りが起こりやすかったとか。そこで、斜面を細かい段々にして棚田を作ることで、地滑りを解消しながら米作りを行う、という方法が取られたそうです。
千枚田というだけあり、田んぼの数は1004枚! 全体の高低差は約50mもあり、キツイ坂道もあります。耕運機も入らないためすべて手作業という厳しい条件のなか、苦労して米作りを行ってきたことがうかがえます。
しかし観光客としてみると、海と千枚田のコントラストは美しく、朝夕、春夏秋冬で、様々に表情を変えながら、人々を包み込むような大らかさに癒されます。
10月中旬から3月中旬にかけて実施される、棚田に約2万個のLEDを敷き詰めたイルミネーションイベント「あぜのきらめき」は、息をのむ美しさです。

日本海の強風から家屋を守る、間垣の里(まがきのさと)

白米千枚田から、さらに奥能登へ進むと、まれ一家の住む架空の村「外浦村」のモデルであり、実際の撮影地である輪島市大沢町があります。
この町で古くから知られているのが、集落全体をすっぽり包んでいる「間垣(まがき)」です。
「間垣」とは、ニガ竹という高さ3mほどの細い竹を敷き詰めて垣根にしたもの。日本海の荒ぶる寒風から家屋を守るために生まれたものですが、竹でできていることから夏は涼しく、また激しい海鳴りの音もやわらげてくれるという、先人の知恵が生んだ優れものです。
現在は、大沢町と上大沢町の2カ所に「間垣の里」あります。
間垣に囲まれた集落は独特の景観ですが、自然と共に生きてきた人々の暮らしのあり方に、思いを馳せることができるのではないでしょうか。

玄関の出入り口以外はすっぽり間垣で包み、家屋を守る
玄関の出入り口以外はすっぽり間垣で包み、家屋を守る

「道の駅すず塩田村」で、昔ながらの塩づくり体験

最後に紹介するのが、珠洲の塩田村です。
珠洲の仁江海岸で1カ所だけ、500年以上前から変わらぬ「揚げ浜式製塩法」で塩を作り続けている塩田があります。
揚げ浜式製塩法とは、海水を汲み上げて浜の塩田に何度もまき、太陽の光にあてて塩田の砂を乾燥・塩分濃縮させ、さらにその砂を集めて海水で漉し、釜で何時間もかけて荒炊きし、煮詰めて精製する方法。
すべての工程を人の手で行うため、地道で過酷な労働となります。さらに、天候により生産量が左右されるため、いまやこの製塩方法は、日本から姿を消しつつあります。
しかし、このように手間をかけて作られた塩は、とてもまろやかで料理の質を変えてしまうほどの味わいです。数年前から発売されている、この塩を使ったしおサイダーも大ヒットしました。また、道の駅すず塩田村では、体験塩田で塩づくりに挑戦できます(5/1〜9/30まで・要予約)。
厳しい自然のなかで生まれた知恵と、その恩恵がもたらした美しい景観が胸打つのは、失われつつある日本の原風景をそこに感じるからかもしれません。素朴で温かい能登の人柄も、この自然のなかで育まれたのでしょう。
「能登はやさしや土までも」と言われる温かい土地柄を、大自然の下、肌で感じてみてはいかがでしょう。