地割れした道路を車が進もうとしていた/1月2日、石川県能登町

 元日の能登半島を、震度7の揺れが襲った。直後から懸命な救出活動が続いている。半島の下でいったい何が起きているのか――。

【独自調査】今後30年間で震度6弱以上の地震発生確率が高い地域

*  *  *

「経験したことのないすごい揺れで、もうダメかと思いました」

 石川県輪島市に住む女性(43)は地震の恐怖を振り返る。

 1月1日午後4時10分、同県の能登半島を最大震度7の地震が襲った。震源の深さは約16キロ、地震の規模を示すマグニチュード(M)は推定7.6。大きな揺れは広範囲に及び、女性が住む輪島市は震度6強を観測した。気象庁はこの地震を「令和6年能登半島地震」と名付けた。

 地震が起きた時、女性は夕食の準備をしていた。最初の揺れはすぐ収まったので安心したが、続けて大きな揺れがきた。

 台所の電子レンジが倒れ、食器が床に散乱し、冷蔵庫の扉が開き中のものがすべて飛び出した。居間のテレビやタンスも倒れ、窓ガラスも割れた。

 自宅は海岸のすぐ近く。間もなくして大津波警報が出ると、取るものも取りあえず、家族5人で高台に車で避難した。

 夜は避難所に入れなかったので車中泊をした。毛布は自宅から持ち出したが、寒くて食べ物もなく、わずかな水でしのいだ。

 一夜明け、自宅を見に行くと、土台のコンクリート部分が大きく壊れていた。住むことができないので避難所に入ったが、この先どうなるかまったくわからず、不安しかないと女性は言う。

「いつもの生活に戻ることを、ただただ祈るだけです」

雨が降る中、倒壊した家屋を見つめる男性の姿があった/1月3日、石川県珠洲市

「流体」の関係性は不明

 能登半島ではここ数年、断続的に強い地震活動が続いている。

 2021年9月に震度5弱、22年6月には震度6弱、23年5月には震度6強の地震が襲った。その後、国の地震調査委員会は「活動は当分続くと考えられる」との評価をまとめ、防災対策の強化を呼びかけていた。

 能登半島で地震が起きるメカニズムは、不明な点が多い。一因と見られているのが、地下深く流れる「流体」だ。地震調査委員会は23年4月、「地下の流体の移動が関与している可能性がある」とする評価をまとめた。

著者プロフィールを見る
野村昌二

野村昌二

ニュース週刊誌『AERA』記者。格差、貧困、マイノリティの問題を中心に、ときどきサブカルなども書いています。著書に『ぼくたちクルド人』。大切にしたのは、人が幸せに生きる権利。

野村昌二の記事一覧はこちら
次のページ
プレートの正面衝突か?