金正恩氏と娘のジュエ氏(提供:Office of the North Korean government press service/UPI/アフロ)

女性の地位を向上させてきた正恩氏

 ジュエ氏にとって金日成氏は「ひいおじいちゃん」だが、日成氏は1994年の7月8日に死去している。つまり2024年7月8日は、死から30年という節目にあたる。

「もし本当の後継者なら、ここで何か重大な発表があっても不思議ではありません。注目すべきは彼女に対する呼称でしょう。これまでは『愛するお子さま』『尊敬するお子さま』と呼ばれてきたわけですが、24年になって別の呼称が発表されるかもしれません」(辺氏)

 一方で、韓国の識者の中には、ジュエ氏が女性であることから、後継者の可能性は低いという指摘もある。

 朝鮮日報(電子・日本語版)は23年12月4日、「金正恩氏に息子はいないのか…韓国大統領室『ジュエ氏が後継者か確認中』、識者の見解は」という記事を配信。「今なお家父長的な文化が強い北朝鮮社会の特性から考えると、キム・ジュエ氏が後継者となる可能性は低いとの見方も根強い」と指摘した。

「意外に思うかもしれませんが、正恩氏は女性の地位を向上させています。まず妻の李雪主さんを、いわゆる“ファーストレディー”として登場させています。これまで北朝鮮の最高指導者が妻の姿を表に出すことはめったにありませんでした。妹である与正氏の存在感は言わずもがなですし、彼の個人秘書は玄松月氏という女性です。『モランボン楽団』の団長を務めたこともあり、元歌手という経歴ですが、信頼を寄せていると言われています。さらに外相も女性の崔善姫氏です。むしろ正恩氏は自分の周囲を妻、妹、個人秘書、外相と4人の女性で固めていると見ることも可能です。であれば、5人目の女性として娘を抜擢したとしても不思議はありません」(辺氏)

 はたして、いまだ謎の多い「ジュエ氏」の素性が明らかになるのか。

(井荻稔)

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