明らかになっているのは「外見」だけ
北朝鮮に詳しいコリア・レポート編集長の辺真一氏は「ジュエ氏は依然として、謎に包まれた存在です」と言う。
「明らかになっているのは外見だけ、と言っていいレベルです。出生年すら確定できていません。そもそも韓国の情報機関である国家情報院は、『正恩氏に子どもは3人』と発表していました。2010年生まれの長男、13年生まれの長女・ジュエ氏、そして17年生まれの子どもは性別不明ということでした。しかし、最近は国家情報院の発表そのものを疑問視する声が増えています」
23年3月、中央日報(電子・日本語版)は「金正恩氏の長男ミステリー…官邸に入ったこのおもちゃから始まった」との記事を配信した。
「記事によると、韓国の情報当局は金氏に直接、空輸される海外調達ルートの内容を把握していたそうです。どんな品物が送られているのか綿密にチェックしていたところ、2010年に男の子用の最高級おもちゃが金氏に送られたことを確認。この情報を元に海外の情報機関とも意見交換を行いながら、2010年に長男が生まれたと判断したことが明らかになりました」(前出・記者)
これに対して辺氏は「要するに長男説はヒューミント(人からの情報)による直接的なものではなく、周辺情報を元にした推測だったわけです」と語る。
「改めて経緯を確認しましょう。2011年12月、正恩氏の父親である金正日氏が死去しました。翌12年の春までに正恩氏は後継者としての地位を固めます。そして同年7月、スイス留学時の友人を平壌に招きました。その際、友人は正恩氏の妻である李雪主さんのおなかが大きかったのを見ています。さらに翌13年4月、友人は平壌に再び招かれ、『娘が生まれた』と教えられました。同年9月には元NBA選手のデニス・ロッドマン氏も招待され、帰国後に『私は赤ちゃんを抱いた。娘の名前はジュエだ』と証言したのです」