表紙はピンクのスーツを着た男が歩いてくる姿を真正面から撮った写真。ハットとタイ、ポケットチーフは赤。口には葉巻。なんて、かっこいいんだ!
タマーニの『SAPEURS(サプール)』は、アフリカ・コンゴ共和国の街でおしゃれに情熱を注ぐ男たちの写真集である。
かの地には「Le Societe des Ambianceurs et des Personnes Elegantes(おしゃれで優雅な紳士協会)」という集団があり、SAPE(サップ)という略称で知られているそうだ。そのメンバーたちがサプール。人びとの尊敬と羨望のまなざしが向けられているのだという。パーティーなどに招かれ、謝礼が支払われることもあるというから、セミプロである。
基本はクラシックな装いだ。スーツ、あるいはジャケット&パンツ。タイは必須だし、ポケットチーフも。ベストを着ている人も多い。彼らの服は高級ブランドのもので、収入からするととてつもなく高価だ。彼らはコツコツと貯めた金で服を買い、それを着て街を歩く。
たんに高価で派手ならいいというものではない。鮮やかな色づかいが見事だが、同時につかうのは3色までにするなど、洗練されたルールがある。また、服を見せびらかすだけでなく、礼儀作法や行動規範もルール化されている。
ページをめくりながら連想したのは、半世紀前の銀座に登場した「みゆき族」だ。あるいは35年前の原宿にあらわれた「竹の子族」。しかしサプールのほうがはるかにセンスがいい。情報環境の違いによるのだろうか。
彼らの服は身体にジャストフィットしているが、買い物としては身の丈に合っているとはいえない。それをヴェブレンがいった「顕示的消費」と考えるか、あるいはバタイユ的な「濫費」や「消尽」と解釈すべきか。
はっきりしているのは、サプールたちがいきいきしていること。やっぱり、おしゃれは楽しまなくちゃね。
※週刊朝日 2015年7月31日号