1985年の日本シリーズ。西武との第5戦で、掛布さんは初回に先制の3点本塁打を放った
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 2023年の日本シリーズ、激闘の興奮のさなか、1985年の阪神を日本一に導いたミスタータイガース、掛布雅之さんがインタビューに応じた。第4戦で劇的なサヨナラ打を放った大山悠輔選手について語った。

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 掛布さんと大阪市内のホテルで会ったのはシリーズ第5戦が終わった翌日の11月3日。この時点で、阪神が3勝2敗で1985年以来となる日本一に王手をかけていた。

 1勝2敗でオリックスに先行された阪神は第4戦の九回裏、2者連続申告敬遠で迎えた1死満塁の好機に不動の4番、大山悠輔(28)が意地の一打をレフト前に運んで対戦成績を2勝2敗のタイに持ち込んだ。

 オリックスの中嶋聡監督が2者連続で申告敬遠という思い切った策に出たこの場面、猛虎打線の4番にとっては屈辱的ともいえるシチュエーションだ。同じ4番の重責を担ってきた先輩として掛布さんがどう見たか、話を振ってみると、

「最後にサヨナラヒットを打ったのは良かったけど、大山が日本シリーズで状態が上がらないのは(後続を打つ)佐藤(輝明)の状態が上がらないからだよね。自分が決めなきゃいけないという思いが強すぎる。佐藤がもうちょっと打ってたら大山の野球が変わると思うな」と口にした。

 大事なシリーズ初戦、二塁への果敢な盗塁で球界の大エース山本由伸の攻略に貢献した佐藤輝明(24)だが、その後バットは湿りがちで第3戦では3三振。打順を5番から6番に下げられた第4戦も3三振を喫していた。そのせいもあってか、確かに前を打つ大山がシーズン中よりボール球に手を出しているようにも映る。

「だから佐藤が悪いからだよ。(大山が)自分で決めに行かなきゃいけないっていう。シーズン中はしっかり待てていたからね。その状況によって、積極攻撃とじっくり打つ場面を分けていた。(欲しいのは)佐藤のホームランだよね。佐藤と大山。この2人にホームランを打ってほしい」

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大山のプロ野球人生は「屈辱」から