ダイハツ工業は今月20日、過去34年間に渡って車両の認証試験で不正があったことを発表した。不正の内容には試験データの改ざんなどがあげられる。ダイハツは福祉車両の開発や販売にも力を入れており、なかには行政に無償貸与しているケースもある。揺れる福祉の現場を取材した。
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「安全面で怖くないと言ったらウソになります。これまでは大丈夫でしたけど……」
こう話すのは、東京都内で高齢者向けの介護タクシーを手がける事業者の幹部だ。
「数年前に、ダイハツのタントを購入しました。スロープがついていて、車椅子の乗ったまま車に乗り降りできるものです。軽自動車でコンパクトなのに、中は広く感じるんですよね。新車で150万円前後とお手頃だったので、購入を決めました」
ダイハツは、トヨタ自動車の完全子会社。軽自動車の国内シェア3割を握る。国内で生産・開発している車両の安全性に関する認証試験で、不正があった。不正の内容については、試験データの捏造(ねつぞう)や改ざんなど25項目に及ぶ。こうした事態を受け、国内外で手がける全ての車両の出荷を当面停止した。
第三者委員会の調査報告書によると、不正は最も古いもので34年前の1989年に行われていた。件数が増加したのは、エコカー競争などが激しくなった2010年以降だった。
不正の原因には「過度にタイトで硬直的な開発スケジュールによる極度のプレッシャー」を挙げた。