「小児が補助人工心臓をつけて移植待機できるのは全国に14施設、小児心臓移植ができるのは7施設しかありません。私がかかわった患者さんでも、秋田や鹿児島から待機施設に搬送できず亡くなった子がいます。また、いま長野や愛媛の待機施設で待っている子は、移植が決まれば東京や大阪まで航空搬送が必要です。移植件数が増えてきたいま、こうした患者搬送は移植医療の最重要テーマの一つです」
福嶌さんらは、伊丹空港と羽田空港を拠点にドクタージェットを運用し、全国から一元的に搬送依頼を受け付けて専任コーディネーターが要否を判断するシステムを構想する。国策としての予算化を目指し、複数の議員連盟からも政府に予算化を求める要望書が出されたが、政策の基本骨格である「骨太の方針2023」には盛り込まれなかった。全国的な実態が不明なことなどが主な理由だったという。
それでも、JCCNでは骨太の方針2025への採択を目標に、24年4月から伊丹空港を拠点に実態調査のための試験運航を始める予定だ。小型機運航大手の中日本航空が持つ既存機を用い、格納庫の確保にも目途がついた。ただ、試験運航とはいえ、必要な費用は数億円規模。1億円の調達を目指し、クラウドファンディングも始めた。
福嶌さんはこう力をこめる。
「小児医療が進んだ現在でも、住んでいる場所によって助からない子がいます。どこで生まれても、どこに住んでいても、公平に高度医療施設に運び、助けられる国にしたい。そのための取り組みです」
(編集部・川口穣)
※AERA 2024年1月1-8日合併号