泉:物事を方針転換するってことは、誰かがいっときしかめ面しないことには転換できない。全員がそれでいいよと一瞬で言うことなんて方針転換でないわけだから。恨まれようが嫌われようが、やるべきことをやるっていうのが政治家やと思ってんで。だから私は子どものころから人に嫌われたくないなんか思ったことない。
大宮:泉さんはなんでそんな強いんですか。嫌われてもええねんって。
泉:うちのおやじは漁師やけど、朝2時から漁に出とるのに、どうして晩ごはんにおかずが何もないねん、なんで貧乏なんやって思ってた。四つ下の弟は障害があって、こんなにええヤツなのに、なんでみんな冷たい目で見んねんって。でも友達が悪いわけでも先生が悪いわけでもなくて、何かが間違ってるんだろうと。
大宮:はい。
泉:その間違ってる何かを知りたいと思ったし、その何かを変えないと、自分としては得心いかなかったので、まあクサい言い方だけど、「冷たいまちを優しくしたい」と10歳くらいで心に誓ってから、ブレてないかな。
大宮:へこむことないんですか。
泉:落ち込むことはないわけじゃないけど、切り替えが早いのと、好きな言葉があって……。
大宮:なんですか。
泉:四面楚歌(しめんそか)。
大宮:ええええっ。もう、変態じゃないですか!
泉:四面囲まれたら、空飛んだろうとか、地面潜って逃げたろと思うんですよ。「絶体絶命」も大好き。絶体絶命になるとグワーッと細胞が働いて、エネルギーが湧いてきて、状況を打開するぞと思うんですよね。
大宮エリー(おおみや・えりー)/1975年、大阪府出身。99年、東京大学薬学部卒業。脚本家、演出家などを経て画家として活躍。クリエイティブのオンライン学校「エリー学園」「こどもエリー学園」を主宰。瀬戸内国際芸術祭(岡山県・犬島)で「光と内省のフラワーベンチ」を展示
泉房穂(いずみ・ふさほ)/1963年、兵庫県明石市出身。兵庫県立明石西高校卒。87年、東京大学教育学部卒。NHKディレクター、石井紘基氏の秘書などを経て、弁護士に。2003年、衆院議員初当選。社会福祉士の資格取得。11年から明石市長。23年4月末で政治家引退
※AERA 2023年4月3日号