また、引き下げ分が別の費用として転嫁され、生活費を圧迫することになる可能性に対しても、

「貸主等が家賃、間代等の引下げに応じる場合であっても、その引下げ分が共益費などの他の費用として転嫁され、結果として生活保護受給世帯の家計が圧迫されることがないよう留意すること」

 と配慮を求めている。家主にとっては、どのような意味でも転嫁のしようのない単純な収入減ということになる。

 家賃引き下げが不可能な場合には、

「当該世帯の意思や生活状況等を十分に確認し、必要に応じて局長通知に定める経過措置等の適用や住宅扶助(家賃・間代等)の限度額の範囲内の家賃である適切な住宅への転居について検討すること」

 とあり、ここではじめて「例外措置・経過措置が適用できないのであれば、引き下げ後の基準内の住居へ転居」となる。例外措置で対応可能なのであれば、「どうしても転居」とはならないのだが、転居の際、あるいは新規に生活保護が適用される場合には、

「福祉事務所は、生活保護受給世帯が保護開始時に住宅を確保する場合や受給中に転居する必要がある場合には、最低居住面積水準を満たす等、適切な住宅の確保を図るため、例えば不動産関係団体と連携し、民間の不動産賃貸情報などを活用した支援を行える体制を整える等、その仕組みづくりに努めること」

 とある。2011年に国土交通省が定めた住の最低基準である「最低居住面積水準」を満たす住居に、生活保護世帯が居住することを求めている、とも取れる。不動産の専門家ではない福祉事務所職員に、住居確保の「仕組みづくり」ができるのか? という疑問は残るけれども。

 住居の質については、

「福祉事務所は、生活保護受給世帯に対する訪問活動等によって、生活実態の把握及び居住環境の確認に努めるとともに、住環境が著しく劣悪な状態であり、転居が適当であると確認した場合には、適切な居住場所への転居を促すなど必要な支援を的確に行うこと」

 と、「劣悪な住を放置してはならない」という内容の記述がある。もし家賃相場が高い地域であれば、特別基準が設定できるため、家賃の安い管外への転居を迫る必要はない。

 この通知には、さらに「貧困ビジネス」「脱法ハウス」対策に関する記述もある。最大に楽観的な解釈を行えば、

「福祉事務所は、今回の住宅扶助改正をチャンスとして、管内の生活保護の住を『健康で文化的な最低限度の』、せめて最低居住面積水準に引き上げることができます。費用の裏付けもあります」

 というメッセージである。

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