サミットストア122店舗で展開した「deleteC」大作戦。日清食品やサントリーなど6メーカーが参加した。写真は店舗をあげて売り場を作り込んだ「篠崎ツインプレイス店」店長・杉浦剛と(撮影/伊ケ崎忍)

起業した仲間が持ち逃げ 急遽NHKの門を叩く

 しかし、ある日、共同代表の相方が金を持ち逃げし、計画は瓦解(がかい)。小国の手もとには、1200万円の借金だけが残った。

 起業して暮らしていこうと考えていた小国は、急遽(きゅうきょ)就職活動に打って出る。だが、すでに就活は終盤で、小国は唯一まだ可能だったNHKの門を叩(たた)いた。起業に失敗したエピソードを面接で話し、それも奏功したのか、小国は狭き門を突破した。

 小国は新人ディレクターとして山形放送局に配属され、最初に「3分企画」と呼ばれるローカルリポートを任された。企画から編集までを自ら行う番組だった。

 入局して3本目に撮ったのは、地方競馬を扱ったリポートだった。

 小国は当初、あと2勝すれば日本最多勝となるセントアトラスという馬を主題に据えていた。しかしその後、馬が所属する山形の上山競馬場そのものがなくなる、という話を耳にした小国は、「地方競馬のなくなる日」というテーマに切り替えて、厩務(きゅうむ)員一家の最後の一日を追うこととする。

 しかし、思い通りにはいかない。取材当日になって、「ごめん、母ちゃんにダメって言われた」と対象者から拒まれてしまうのだ。必死に説得しても覆らない。残りあと6レースとなって、雨も激しく降り出してくる。もはや自分にはどうにもならないと判断した小国は、デスクに電話を入れ、状況を説明した。

 説明を一通り聞いたデスクから返ってきた言葉は、思いもしないものだった。たった一言、「で?」と返してきたのだ。

 小国が振り返る。

「自分としては、デスクから、『わかった、じゃあ、この企画は飛ばそう』と言ってほしかった。3本目で経験もないし、十分苦労はしたし、もう飛ばしてほしいと思っていたんですね」

「別を当たります」と電話を切った小国は、全厩(きゅうしゃ)舎を回って、新たな取材対象者を探しにかかる。すると、事情を聴いた若い厩務員が引き受けようと手を挙げてくれた。その直後、その厩務員の大切にしている馬がレースに出ることになっていることがわかり、小国はあわててカメラスタッフに指示して、そのシーンを収めることができた。

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