小国の「deleteC」は世界的に注目されており、11月には韓国の国際婦人科癌学会に招かれ基調講演をおこなった(撮影/伊ケ崎忍)
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 もし「がんを治せる病気にしたい」と持ち掛けられたら。「高齢者とサッカーをかけあわせたい」と相談されたら。小国士朗はそんな相談を持ち掛けられた時、斜め方向から企画を立ち上げる。人の営みが感じられる、温かいアイディアばかりだ。世の中の役に立つと分かっていても、人は簡単には動けない。でも、人が動きたくなる仕掛けがあれば、社会は変わっていく。

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千人を超える聴衆を前に、小国士朗(おぐにしろう・44)は、自身の活動「deleteC(デリートシー)」について、語り始めた。11月5日、韓国・ソウルの大ホールには、約120カ国から国際婦人科癌学会に所属する医師たちが集まっていた。

 小国を推薦したのは、現学会長で婦人科系がんの専門医として名高い藤原恵一。藤原は「deleteCの話を世界中の医師や研究者に聞かせたい。その話はきっと彼らの希望になるはずだから」と、躊躇(ちゅうちょ)する小国を舞台へと引っ張り出した。

 小国はまず、自身の団体の説明から始めた。

「deleteCは『みんなの力で、がんを治せる病気にする』ことをミッションに掲げ、2019年に発足しました。deleteCの『C』は『Cancer』(がん)の頭文字。その『C』を消す=deleteする、様々なアクションを通じて、がん治療研究を応援しようという活動をしています」

 壇上の大画面にはサントリーの「C.C.レモン」のペットボトルの画像が映し出される。CCの文字が斜線で消されたボトルデザインになっている。

「ご覧の通り『C』がデリートされています。もちろん普段は『C』は消されずに売られてます。これは、企業が期間限定、数量限定でつくってくれた特別なパッケージです」

 そして、小国はこう続けた。

「『C』のつく商品や企業名からCを消した特別な商品を製造販売してもらい、消費者がそれを買うと、売り上げの一部ががん治療研究の寄付につながるという仕組みです」

 企業がCを消した商品を販売するだけでなく、Cの入った商品を購入し、Cの文字を消した写真をスマホで撮り、「#deleteC大作戦」とハッシュタグをつけてSNSに投稿すると、1投稿あたり100円の寄付が連携企業から支払われるという仕組みも披露。「このアクションは毎年9月に行われ、1カ月間に数万人が参加し、1500万円以上の寄付が集まるまでになっている」と小国は補足した。

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