国民もまた、裏金疑惑に憤りは感じているものの、すぐに政権交代するのは難しいと諦めている節がある。

 しかし、本当にそうだろうか。

 岸田内閣の支持率が20%を切って15%程度に下がる可能性が高まる中、投票率(小選挙区)が前回衆院選の55.93%から15ポイント程度上がって70%前後になれば、野党支持層だけでなく無党派層の投票が大幅に増えることになる。今回の自民批判の世論を野党がうまく取り込んで選挙を戦えば、自民党の過半数割れということも十分にあり得るだろう。

 そんなに投票率が上がるはずがないと思うかもしれないが、衆議院では1993年の選挙までは、投票率は概ね67%から77%の間で推移していた。60%を切ったのは比例代表制を導入した96年からだが、その後も2005年の67.5%、09年の69.3%と比較的高い投票率を記録したこともある。

 最近は、14年が52.7%で史上最低、17年が53.7%、前回の21年も55.9%と低迷しているが、こうしてみると、第二次安倍政権誕生となった12年の総選挙の59.3%以降一貫して50%台なのがむしろ例外だと考えることもできる。つまり、安倍一強政権は、国民の選挙への無関心が生んだということだ。この点は十分に反省し、また、その事実をしっかりと認識し続けなければならない。

 安倍氏は、選挙前になるとポピュリズム的なバラマキにより弱者に寄り添う演出を行い、批判勢力を懐柔するとともに無党派層を安心させて選挙から遠ざける一方で、一部の右翼思想を持つ層に媚びる言動で彼らを投票に呼び込むという作戦をとったが、これが低投票率を維持しながら自民党が勝つ戦略として効果的だった。岸田政権も同様に低投票率に助けられている。

 資本主義経済には様々な欠陥がある。剥き出しの競争を放置すれば、弱肉強食の世界になり、格差拡大は避けられない。それを防ぐには、民主主義により、強者の横暴を防ぎ社会的公正を維持するという仕組みが不可欠である。民主主義が機能すれば、資本主義の欠陥を是正してより公正で豊かな社会を作ることができるというわけだ。

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選挙が国民のためのものになっていない