「ただ、専門医でないと正確な診断はつきにくく、特に軽度で見つけるのは至難の業です。認知症はタイプによって対処法が異なります。さらに 認知症と同じような認知障害が出る他の病気も、脳をはじめ腎臓、肝臓、心臓の病気、糖尿病など多々あり、その場合は治せる可能性も。早期の正確な診断が重要です」

 しかし本人に「認知症では」と言っても否定するだろうし、言い争いの末、より頑なになりかねない。自尊心を傷つけず受診につなげるには「たまには健康診断を受けよう」と誘うのがよいという。専門医を受診できれば、本人に気づかれることなく誘導し、診断をつけてもらえるそうだ。

離れて暮らす親のサポート、行政サービス利用を

 会話での留意ポイントを知っていれば、ふだん電話でも異変は感じ取れるはずだ。また、親が一人暮らし、遠くてなかなか様子を見に行けないといった時には、谷医師は行政サービスの積極的な利用を推奨する。

「市区町村の地域包括支援センターに相談すれば、適したサービスにつないでもらえるはずです。さらにご近所に事情を伝えて声をかけておくなど、第三者の観察者を作ることです。コンビニや郵便局、保険会社などで見守りサービスを行うところも増えています。第三者のほうがスムーズにサポートできることも多く、何より今や社会で認知症に対応する時代。相談を躊躇する必要はありません」

 久しぶりに顔を合わせる帰省時は、いつも一緒にいるより変化に気づきやすいともいえる。親の様子が変わってしまったことを認めるのはしのびないが、逃げても事態はよくならない。早期発見のために目をそらさず向き合うことが大事だ。

(文/石井聖子)