新型コロナの5類移行後初めて迎える年末年始、数年ぶりに帰省する人も多いのでは。久々に会う親の背中は小さく見えるものだが、「何か違う」と感じたら注意が必要だ。高齢になった親に対して気づく違和感には、認知症の初期症状が隠されているかもしれない。帰省時のチェックポイントや、傷つけたり口論になったりすることなく受診を促す方法などを医師に聞いた。
【帰省時チェックリスト】一つでも当てはまれば親の認知症が疑われる
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厚生労働省によると2025年には65 歳以上の約5人に1人が発症すると見込まれ、ひとごとではない認知症。帰省時は親の異変に気づくチャンスだが、どんなことに気をつけたらよいのだろう。認知症診療に取り組む京浜病院院長の熊谷賴佳(よりよし)医師は「見てほしいのは生活に支障が出ていないかどうか。認知症はもの忘れではなく生活障害の病気だからです」と説明する。
「もの忘れをしてもそれを自覚し、メモしたり人に頼ったりすることで自立した生活ができる場合は、老化による認知障害はあっても認知症ではありません。認知症は、認知機能の低下が原因で健康や経済状態などを害する、あるいは他人に不愉快な思いをさせて人づきあいがスムーズにいかなくなるなど、生活に支障をきたす状態をいいます」
自炊の気配がないなど、ちゃんと食事をしていない様子がうかがえる一方で、酒の空き瓶やペットボトルはたくさんあることも多いという。とるのが簡単な飲み物は、在庫がたまりやすいからだ。服装では、寝間着や部屋着、外出着の区別がなくなっている場合も疑ってみるべきだ。
「味覚の変化として、極端に甘いもの、塩辛いもののどちらかを好む傾向にあります。味覚が鈍感になる中でその二つが最後まで残る味覚だからです。うま味や酸味などはわかりづらくなり、同じものばかり食べるようになりがちです」