映画「窓ぎわのトットちゃん」(全国東宝系で公開中)にはトモエ学園の校舎などが黒柳徹子さんも懐かしがるほどに再現されている (c) 黒柳徹子/2023映画「窓ぎわのトットちゃん」製作委員会
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 42年ぶりの続編出版で話題の「窓ぎわのトットちゃん」。初の映像化となるアニメーション映画も公開中だ。いま、なぜトットちゃんなのか。AERA2023年12月18日号より。

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「『窓ぎわのトットちゃん』は中学生のときに母に薦められて読みました。自分で言うのもアレなんですけど、けっこう真面目に過ごしてきたので、トットちゃんみたいに破天荒で自由な感じにちょっと憧れたことを覚えています」

 と、Z世代の本誌男性カメラマン(23)は話す。が、別のカメラマン(23)は、「タイトルは知っているけど読んだことありません。3歳上の奥さんも読んでないそうです」。──え? あのトットちゃん、読んだことないの?

 1981年に出版された『窓ぎわのトットちゃん』は世界35カ国語に翻訳され、累計2500万部の大ベストセラーだ。俳優・黒柳徹子さんの自伝的な物語で、授業中に窓ぎわに立ってチンドン屋さんを呼び込んだり、机の上板を延々と開けたり閉めたりする“困った子”だったトットちゃん(=黒柳さん)が小学校を退学になり、「トモエ学園」という学びの場を得て成長する様子が描かれる。実際、かなり「困った子」だった筆者(53)も中学時代に親に薦められて読み、シンパシーを持った記憶がある。

母たちが口コミで広げ

 今年10月に出版された『続 窓ぎわのトットちゃん』の担当編集者・講談社学芸第一出版部の井本麻紀さん(55)は言う。

「当時、最初にブームに火を付けたのは若いお母さんたちだったんです。そこからじわじわと口コミで広がったと聞きました」

 続編もすでに50万部を突破。読者の反応も当時の親子世代からが多いという。

 続編にはトットちゃんの疎開先での日々や女学生時代、NHKに入局した当時の様子がユーモアと躍動感たっぷりに描かれる。同時に著名バイオリニストだった父・守綱(もりつな)さんの出征や空襲の描写など、戦争の気配も感じられる。

「続編の執筆は徹子さんからの提案でした。大きな動機はやはりウクライナ侵攻だと思います。徹子さんは戦争に本当に胸を痛められていました。ただ戦争の悲惨さを伝えつつもウェットじゃないのはさすがです。天職といえる仕事に就き、活躍してきた徹子さんが進路に悩んだ過去なども書かれているので、若い世代の心にも響くと思います」(井本さん)

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