よりよい老後送るために必要なこと(イラスト:サヲリブラウン)

 作詞家、ラジオパーソナリティー、コラムニストとして活躍するジェーン・スーさんによるAERA連載「ジェーン・スーの先日、お目に掛かりまして」をお届けします。

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 相変わらず各地で講演をしております。先日は大阪府寝屋川市にお邪魔しました。

 さまざまな土地を訪れて、気付いたことがあります。どこでも必ず、自治体が催す講演会へ定期的に足を運んでいる高齢者がいらっしゃること。

 ジェーン・スーの話に興味があるのではなく、無料で聞ける話があるなら、出来る限り足を運ぶというスタンス。参加者の抽選が行われた場合、そういった高齢参加者は少なくなるものの、先着順の場合は最前列か、少なくとも前方に座っていらっしゃいます。そして、ほとんどの方が熱心に話を聞いてくださる。場合によっては質問で挙手もする。

 真に豊かな老後とは、こういうことを言うのだろう。私は深く感銘を受けました。よく知らぬ人の話を聞く精神的余裕、衰えぬ知識欲、そして健康な体。これらが揃わないと、実現は叶いません。それを持ち続ける自信、いまの私にはございません。

 身内を腐すのもなんですが、我が父に同じことができるとも思えません。1時間半もじっと座っている体力がないでしょうし、新しいことへの好奇心も、残念ながら薄れている。それは仕方のないことですし、普通だとも思います。

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ジェーン・スー

ジェーン・スー

(コラムニスト・ラジオパーソナリティ) 1973年東京生まれの日本人。 2021年に『生きるとか死ぬとか父親とか』が、テレビ東京系列で連続ドラマ化され話題に(主演:吉田羊・國村隼/脚本:井土紀州)。 2023年8月現在、毎日新聞やAERA、婦人公論などで数多くの連載を持つ。

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