安保法制は憲法違反だとの見解が、憲法学者からも元内閣法制局長官からも出されている。にもかかわらず、頑として聞く耳もたぬ安倍政権。憲法をイチから学び直したほうがいいんじゃないだろうか。
いとうまこと(伊藤真)の文・たるいしまこ(垂石眞子)の絵による『けんぽうのえほん あなたこそたからもの』は幼い子どもたちのために日本国憲法について説いた絵本である。条文ごとの解説ではなく、その精神を子どもの生活実感によりそって説明してくれるのが新鮮。
たとえば〈ドッジボールでまけそうになると、ルールをやぶって、かとうとする。わがままで、いばってるこ、いるよね。ゲームはめちゃくちゃ、みんなおろおろ〉。ほらね、だれかさんのことみたい。
〈つよくて、ちからのあるひとが、かってにルールをやぶったり、あたらしいルールをおしつけてきたら、いやでしょ。こまることもでてくるよね。だから、じてんしゃにブレーキがついているように、わたしたちのくにには、けんぽうがある〉
そうなんですよ、政治家のみなさん。〈つよくて、ちからのあるひとたちにつけたブレーキ。それが、けんぽう。いちばんつよいルール〉ってね。
言葉つきは易しいが、相当高級な理念をこの本は語っている。憲法でいちばん大切なのは13条「個人の尊重」であると強調。〈けんぽうがひつようなのは、よわいがわにいるひとたち〉といい切るとこか。
人権を獲得するまでの経緯にも言及。〈ながいれきしのなかで、たくさんのひとびとが、ぐんたいやけんりょくによって、くるしめられてきた。けんりょくというのは、いやなことでもむりやりさせる、おおきなちからのこと。もっとじゆうに、もっとしあわせにいきるために、ひとびとは、たたかってきた〉。だから〈わたしたちのけんぽうは、たくさんのひとたちからの、おくりもの〉。
子どもたちに与えるというよりは読んでやりたい本。「憲法ってなーに」の原点に立ち戻れる。
※週刊朝日 2015年7月10日号