日本人は「休み下手」と言われて久しい。だが、変化も起きている。人手不足が加速していく社会だからこそ、「休めない」を放置してはならない。AERA2023年12月18日号より。
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働き方改革が進む中、日本人の「休み方」には課題も多い。仕事を休んでも賃金が支払われる年次有給休暇(有休)の取得をめぐる問題もその一つだ。
ただ、2019年の労働基準法改正で年5日の有休取得が義務付けられて以降、取得日数や取得率は増加傾向にある。厚生労働省によると、22年の労働者の有休取得率は62.1%と初めて6割を超えた。とはいえ、政府が目標としている「25年までに70%以上」の取得には至らず、欧州先進国に比べると依然、低水準なのが実情だ。
アエラが11月に実施した「有休」に関するネットアンケートでも「取りにくい」との回答が大半。人手不足を背景に「仕事量が多い」ことを理由に挙げる人が目立った。
家電メーカーに勤務する千葉県の40代女性は「休むとその分の仕事のしわ寄せが来て、翌日から遅くまで残業しなければいけなくなる」と訴える。「精神的に追い詰められるくらいだったら休まないほうがいい。怖くて休めない」のが本音という。
通信機器メーカーに勤務する埼玉県の50代男性も「仕事を納期までに終わらせないといけないため休めない。休暇を取ろうとすると、他の日の仕事量が増え、かえって疲れる」と吐露する。男性は家族の死をきっかけに適応障害(不眠と気力の低下)になり、睡眠導入剤と抗不安薬が手放せないという。「今は何とか仕事を続けられていますが、疲労がたまった時に十分な休暇を取れていれば状況は変わっていたかもしれません」
職場の雰囲気も原因
有休が取りにくい理由に「職場の雰囲気」を挙げる人も目立った。
京都府の勤務医の60代男性は「休まない職員が良い職員。それを美徳とする(職場)環境がある」と指摘。「周りが(有休を)取らないため、取得日数が他の人より多くなると上司の評価が下がる」と感じている兵庫県の運輸業の40代男性は、風邪をひいた時に無理に出勤してさらに体調が悪化して1週間休んでしまったことや、法事をキャンセルして休日出勤したため親戚と疎遠になってしまった経験を明かした。