ダウン症の次男の方が育てやすかった
美良生くんがダウン症だとわかった当初こそ、「定型発達の長男でさえこれほど大変で苦労したのに、障害がある子を育てる自信は全くなかった」という奥山さん。しかし、実際には、美良生くんのほうが長男の空良くんよりもがぜん育てやすかったそうだ。
「ギャン泣きもしないし、騒がないし、夜泣きもほぼなくて。ちょうどいい時間に起きて、いつでも寝てくれるっていう理想の赤ちゃんでした。それは今も変わらないですね。あと、外食に連れて行っても騒ぐことがありませんでした。長男のときは、外食するのも一苦労で。それまで寝てたのに料理が運ばれてきた瞬間に起きて泣くんですよ(笑)。私と夫で交代で面倒をみながら食べていたので、味を何にも覚えていないんです。そのたびに『せっかく来たのに!』と思っていました。私が長男の子育てで大騒ぎしてるのを、神様が空の向こうで見ていてくれて、じゃあ育てやすい子をあげるよ、って美良生をプレゼントしてくれたんじゃないかなって思っています」
近年、新型出生前診断(NIPT)が、「命の選別」につながるのではないかなどと議論を呼んでいる。NIPTは、胎児にダウン症などを発症し得る染色体異常がないか調べる検査で、妊婦の血液を採取するだけで、異常の有無が“簡易的に”わかる。だが、NIPTは「非確定的検査」といわれ、それだけで異常が確定するわけではない。異常が疑われた場合でも、より精密な検査を受ける必要がある。しかしながら、NIPTで陽性が出た場合、多くの人が中絶を選ぶといわれている。