小菅勇太郎(こすげ・ゆうたろう)/東京・町田で生まれ、国内外を転々として育つ。慶應義塾大学在学中の2021年に長野県辰野町へ移住、MoonBaseを創業(写真:本人提供)

Z世代」と呼ばれる若者は、社会問題への関心が強い傾向があり、学生時代に起業する人も少なくない。Z世代の経営者は何がきっかけで起業し、どんな価値観を大事にして働いているのか。MoonBase代表取締役CEO・小菅勇太郎さんに聞いた。AERA 2023年12月11日号より。

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 2021年に長野県辰野町へ移住し、築100年の古民家を借りました。そこを拠点に「Co-Sato(コサト)」という子育て世帯向けの二拠点居住サービスをやっています。数家族が「行きつけの田舎」に集まって生活する、拡張家族をコンセプトにしたサービスです。

 僕は親が転勤族で、故郷と呼べる場所がありません。「いなか」や「ふるさと」への憧れはずっと持っていました。一方で、子ども時代の幸せだった記憶もたくさんあります。特に11歳から14歳まで暮らしたマレーシアでの生活は忘れられない思い出です。かなりの田舎で自然豊かな場所でした。毎週末には通っていたインターナショナルスクールの友達の家族で集まって、子どもは海に入ったり走り回ったり、大人は談笑したり、思い思いに過ごしていました。

 自分がほしかったふるさとをつくること、そして自分が感じた幸せな経験を都会の子に提供したいと思ったことがサービスをつくったきっかけです。

起業機に仲間が集まる

 Co-Satoは今のところ辰野町の1拠点ですが、千葉県で2拠点目を開く準備を進めています。3年後には全国10拠点を目指したい。それぞれの拠点に地域に思い入れを持った家守(やもり)がいて、そこを「行きつけの田舎」とする人が集まってくることを目指しています。

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川口穣

川口穣

ノンフィクションライター、AERA記者。著書『防災アプリ特務機関NERV 最強の災害情報インフラをつくったホワイトハッカーの10年』(平凡社)で第21回新潮ドキュメント賞候補。宮城県石巻市の災害公営住宅向け無料情報紙「石巻復興きずな新聞」副編集長も務める。

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