地域にとっても二拠点居住者はひとつのキーワードになると思っています。例えば道の整備や水の管理などは都市部では行政が担うことが当たり前ですが、田舎では全部自分たちでやっているケースが少なくありません。地域活動の担い手が減ることは地域の荒廃に直結します。逆に、若い世代や子どもがいるだけで未来に向けて地域をどうしていくかという議論が生まれます。
ただ、移住者を増やす取り組みは少ないパイの奪い合いで限界を迎えています。移住という形にとらわれず、愛着を持って大切にしたい地域を二つ、三つ持つ人を増やす、一緒に地域に関わるファンを増やしていくことを全国でできたらいいなと考えています。
僕らの世代で地方に目を向ける人は少なくありません。特にコロナ禍を経て、東京育ちの学生が地方で暮らすことを選択肢として考え始めたり、地方から上京してきた人が地元への思いを改めて持ち直したりするケースが増えていると感じます。
会社のもうひとつの事業として取り組んでいる「Rural Labo(ルーラルラボ)」は、地域活性化に興味がある若者のコミュニティーです。会社を創業する前年に立ち上げたもので年々メンバーが増え、今では600人ほどになりました。大半は学生で、勉強会をしたり、実際に地域の空き家の利活用に取り組み始めたりしています。
起業したことで、自分のビジョンに共感して仲間が集まってくれたり、たくさんの応援をもらえたりする。いま、すごく幸せな生き方ができています。
(編集部・川口穣)
※AERA 2023年12月11日号