嫌な気持ちになる相手のSNSを監視し、追いかけてしまう。そんな経験がある人もいるかもしれない(撮影/小黒冴夏)
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 不快に感じる相手のSNSの閲覧をやめられない。そんな「ストーキング」に悩む人が後を絶たない。どんな心理が作用しているのか。AERA2023年12月11日号より。

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 9月30日付の朝日新聞「悩みのるつぼ」のコーナーの記事に目が留まった。投稿した30代女性の悩みはこうだ。

「15年間嫌い続けている女性がいます。彼女のSNSをストーキングしては苛立つということをやめられません」

 嫌いな女性は学生時代のサークルの後輩。美しく天真らんまんで、目当ての男性に近づいては性的な関係を持つ、典型的な「サークルクラッシャー」だ。相談者の女性はこの15年で結婚し、子どもも生まれているのに、彼女の一挙一動をSNSでフォローすることをやめられないという。回答者の文筆業・清田隆之さんが「自分にも度々SNSをストーキングしてしまう相手がいるため、今回は他人事ではいられません」と同調しているのも印象に残った。

最初は「憧れ」から

 異性・同性を問わず、こうした行動にはまってしまう人は少なくないのかもしれない。同様の経験談を募ったところ、こんな話を聞くことができた。

 アニメやコスプレが好きな30代のパート女性は約10年前、コスプレが趣味の少し年上の会社員女性を個人ブログで知った。数年後、女性がX(旧ツイッター)やインスタグラムで発信しているのを知り、フォロワーに。コスプレの撮影のため全国各地を「遠征」したり、仕事仲間との飲み会で盛り上がったりしている「キラキラした日常」の写真が次々にアップされるのを見て憧れを抱く。

 そのうち、コスプレ撮影の遠征先を知りたくなった。「パズルを完成させるノリ」で投稿写真の背景やツイートの内容を手掛かりに手当たり次第にネット検索し、場所を特定した。この時点までは自己完結していた。が、彼女にもっと近づきたいとの思いから、ある行動に出る。会社員女性がSNSにアップした飲み会の場所が特定できたのを、本人に知らせたくなったのだ。

「この店に行かれたんですね」。店名をリプライすると、「そうです」と返信が届いた。彼女の存在が一層身近に感じられた。だが、会社員女性の投稿を浴びるうち、「自分にないものがどんどん目に入る」ことで心情に変化が生じる。嫉妬だ。

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渡辺豪

渡辺豪

ニュース週刊誌『AERA』記者。毎日新聞、沖縄タイムス記者を経てフリー。著書に『「アメとムチ」の構図~普天間移設の内幕~』(第14回平和・協同ジャーナリスト基金奨励賞)、『波よ鎮まれ~尖閣への視座~』(第13回石橋湛山記念早稲田ジャーナリズム大賞)など。毎日新聞で「沖縄論壇時評」を連載中(2017年~)。沖縄論考サイトOKIRON/オキロンのコア・エディター。沖縄以外のことも幅広く取材・執筆します。

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