「ゲームのノリで」
会社員女性が「仕事の取引先です」というメッセージを付けて投稿しているおしゃれなロビーの写真があった。いつものように場所の特定作業に入ると、ある不動産会社のHPに掲載されていたロビーの写真と一致した。女性が「お土産もらいました」と以前アップしていた商品のメーカーの所在地をヒントに特定したという。その不動産会社の社名とともに、「取引先の敷地を無断でアップするのって、コンプライアンス的にどうなんですか」とメッセージを送ったところ、会社員女性は直後に該当する投稿を削除。それ以降、SNSにプライベートな情報をアップしなくなった。
「いつものパズルゲームのノリでやったら、ドンピシャの会社が見つかったので、ついおせっかい心が働いて……」
4年前の経験をこう振り返る女性がここで踏みとどまることができたのは、相手に警戒されたことを察知して「逸脱」を自覚したのと、アイドルタレントの推しを見つけ、興味の対象がそれた面も大きかったという。
「面識のない相手でもSNSだと身近に感じてしまいがちですが、距離感を間違えないようにしないと自分も相手も不幸にしてしまうと思い知りました」
「苦しみは相手のせい」
嫌な気持ちになる相手をわざわざ追いかけてしまう厄介な心理の背景には何があるのか。
「ストーカー規制法は、つきまといをする人間に恋愛感情などの好意の感情がないと被害者は保護対象になりません。しかし、そうした感情がなくても、親子、客と店員、ご近所同士などあらゆる関係において嫉妬や被害者意識を持ったことから、つきまとうケースはかなりあります」
こう話すのは、ストーカーの被害者や加害者の相談に乗るNPO法人ヒューマニティの小早川明子理事長だ。SNSストーキングと「SNSでの監視の嗜癖」は区別する必要があるという。
「ストーキングは無許可接近です。拒絶されていない状態で合法的に相手を見つめ続けるのはストーキングではありません。ただ、やめられないという状態は健康ではありません」