就寝中の咳(せき)が続くことで、不眠を訴える患者も多い「咳ぜんそく」。気道(気管支)に炎症が起こる病気ですが、似た名前の「ぜんそく」とは、共通する点もあれば、異なる点もあります。どこがどう違うのでしょうか。また、ぜんそくは大人になってからでもかかることはあるのでしょうか。専門の医師に聞きました。この記事は、週刊朝日ムック「手術数でわかるいい病院」編集チームが取材する連載企画「名医に聞く 病気の予防と治し方」からお届けします。「咳ぜんそく・ぜんそく」全3回の2回目です。
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咳ぜんそく患者の約3割はぜんそくになる
季節の変わり目や夜間・早朝などに咳が続く「咳ぜんそく」では、空気の通り道である気道(気管支)に炎症と過敏性が起きています。
一方、気道が同じような状態になる「ぜんそく」では、咳ぜんそくに比べて炎症の程度が強く、気道がより狭くなるため、咳のほかに息苦しさや、呼気時(息を吐きだすとき)にぜいぜい、ヒューヒューと音がする「喘鳴(ぜんめい)」が表れます。
こう聞くと、咳ぜんそくが重症化したものがぜんそく、あるいはぜんそくの前段階として咳ぜんそくがあると考えがちですが、必ずしもそうではないようです。名古屋市立大学呼吸器・免疫アレルギー内科学分野教授の新実彰男医師は次のように話します。
「咳ぜんそくを放置したり、治療が不適切・不十分な場合には、約3割の患者さんがぜんそくに移行します。しかし咳ぜんそくのまま経過する人も多くいることから、咳ぜんそくがぜんそくの前段階とはいえません」
ぜんそくに移行しやすいのは、治療が不十分な場合に加えて、気道の炎症が強い人、気道の過敏性が強く気道平滑筋という筋肉の収縮が起こりやすい人、アレルギー性鼻炎や花粉症などのアレルギー性疾患があって、いろいろなアレルゲン(アレルギー症状を起こす物質)をもっている人などが挙げられます。