
それだけの道具だけに、使用期限を過ぎた後の処分方法も大変だ。
ごみとして捨てる前に、周囲に誰もいない山の中などで噴射して、カートリッジの中を空にする必要がある。その際は雨具の上下を着用し、ゴーグルとマスク、ゴムかビニールの手袋で完全防備が必要だ。そのため、専門業者に処理を依頼することを勧めている。
万が一、室内で噴射すると、カプサイシンの粒子を完全に除去することは非常に困難だという。
なお、クマ撃退スプレーは預け荷物であっても、航空機内へ持ち込むことが一切認められていない。所持したまま空港を訪れると、搭乗前に没収されてしまうため、現地の登山用品店などで購入、もしくはレンタルする必要がある。
危険な道具だけに、藤村さんは「電車など公共交通機関への持ち込みはご遠慮下さい」と話している。
噴射されたクマは「ギャーッ」
「これまでに何回もクマ撃退スプレーに助けられました」
そう語るのは、NPO日本ツキノワグマ研究所の代表の米田一彦さんだ。
米田さんは、秋田県自然保護課でクマ対策に従事していた50年ほど前から、数え切れないほどクマに出合ってきた。さらに、襲われたことも珍しくないという。
「一般的な攻撃とは違う、殺人的な攻撃で襲われたのは9回。捕まえるときに麻酔で失敗したとか、越冬穴に入ったら襲ってきたとか」
いずれも重大な事故にならなかったのは、経験によってクマの動きを読めたこともあるが、クマ撃退スプレーを使ったことも大きいという。
「迫ってきたクマの鼻先に向けて噴射すると、ギャーッと逃げていきます。クマは唐辛子成分が付着して、まっ黄色になる」