東海道新幹線の車内で2日、強い刺激物を噴射する「クマ撃退スプレー」が撒き散らされ、乗客が病院に運ばれる騒ぎがあった。クマの出没が全国で相次ぎ、死傷者が過去最多の212人に上った今年、クマから身を守る道具として注目されている。しかし、クマを追い払える「威力」があるだけに、厳重な取り扱いが必要だという。
【写真】クマの専門家がとらえた秋田県の「人喰いクマ」の姿はこちら
* * *
報道によると、2日夜、東京に向かっていた東海道新幹線「ひかり518号」の乗客から「車内でスプレーがまかれた。乗客がせき込んでいる」と警察や消防に通報があった。
列車は浜松駅で緊急停止し、乗客全員はホームに避難。5人が目やのどの痛みを訴え、病院に運ばれた人もいたという。
原因とみられているのが、クマ撃退スプレーだ。浜松駅で乗車した登山者が持っていたもので、何らかのはずみで誤って噴射した可能性があるという。
クマ撃退スプレーを誤噴射したとみられる事故は、これまでにも起こっている。
2019年3月、北アルプスの新穂高ロープウェイのゴンドラ内で異臭が発生し、乗客約10人が体調不良を訴えた。ドア付近には、クマ撃退スプレーから噴出したとみられるオレンジ色の液体が付着していたという。
同年10月には北海学園大学(札幌市)で、学生5人がのどの痛みなどを訴えた。当時、建物内にいた山岳系サークルが「クマ撃退スプレーを誤って噴射したかもしれない」と大学に申し出たという。
浴びると大変なことに
国内では現在、10種類以上のクマ撃退スプレーが販売されており、なかでも自治体や国立公園管理団体、警察、自衛隊などでの採用実績があるのが米国製の「カウンターアソールト」だ。
ただ、輸入総代理店の「アウトバック」(盛岡市)の藤村正樹・代表取締役によると、今回の浜松駅での「事故」について現段階で警察などからの照会はなく、噴射されたスプレーが「カウンターアソールト」かどうかは不明だという。