店頭に並ぶヒグマ撃退スプレー。ヒグマの目撃情報が増え、問い合わせが増えているという=2023年6月、札幌市中央区北2条西4丁目の「モンベル 札幌赤れんがテラス店」

 カウンターアソールトも含めた一般的なクマ撃退スプレーの主成分は、唐辛子に含まれる「カプサイシン」だ。

 食べ物に含まれるものだけに、カプサイシンが人や動物の体内に入っても害はない。しかし、ガス状になったカプサイシンを浴びると、目や鼻、口、のどなどの粘膜に焼けるような痛みを覚え、呼吸が難しくなる。 

 万が一、顔に付着したときは冷たい水で目や鼻の中をよくすすぎ、十分にうがいをする必要がある。頭髪や衣服も洗わなければならない。45分経過しても痛みがとれない場合は、医師の診察を受けたほうがいいという。
 

原型は対人用の「兵器」

 藤村さんの資料などによると、クマ撃退スプレーの原型は、1930年代に米軍が非致死性の兵器として開発したもの。これがクマ対策に使えると米モンタナ大の研究者が着目し、1986年にカウンターアソールトが誕生したのだという。
 

 藤村さんは1990年にクマ撃退スプレーを日本で初めて商業目的で輸入し、普及させた人物だ。野生動物、特にクマによる被害防止に取り組んできた一方、

「(クマ撃退スプレーの)事故防止に関して、カタログにくどいほど詳しく書いてきました」

 と話す。

 クマを撃退する威力があるだけに、スプレー上部にある噴射レバーを間違って押さないように、レバーを挟むように「セイフティ・クリップ」が設けられている。

 そして藤村さんによると、スプレーを山中以外で持ち運ぶときには、セイフティ・クリップが外れないように専用のホルスターなどに入れるかビニールテープなどで固定し、そして製品をビニール袋に入れて密閉し、さらにエアーキャップなどの緩衝材で包む、という「厳重さ」で取り扱うべきものだという。
 

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「何回もスプレーに助けられた」