喜びを分かち合うように抱き合う川尻夫妻(撮影/上田耕司)

 妻の陽子さんもこう続ける。

「待ちに待った“アレ”でしたから。気持ちが込み上げてきて、泣が止まらなかった」

 店内にいるファンからも「ありがとう、ありがとう、川尻さん」とコールが鳴りやまなかった。

 川尻氏が現役時代につけていた背番号「19」のユニフォームを着ていた安井元晶さん(61)はこう言った。

「私は寅(とら)年生まれで、西宮出身。私が生まれた1962年は阪神が優勝した年でした、もう最高です」

 店の常連だという岩崎誠さん(61)は、「阪神優勝」と書かれた手作りの扇子とユニフォームを着て応援していた。

「私も1962年生まれで、2003年も2005年も甲子園にいた。今年は川尻さんと一緒に優勝を見ることができてうれしい。だって、川尻さんはかつて阪神のエースだった人ですよ。その川尻さんと優勝を分かち合えるなんて、本当に感謝しかありません」

 過去の阪神優勝を知っている年配者だけでなく、若い人の姿もあった。立命館大学3年の酒井翔真さん(20)は、奈良からこの店に駆けつけたという。

「昨日は甲子園にいました。ファンのみなさんが心の底からエネルギーを放出している感じで、すごい熱気でした。岡田監督は“アレ”を封印すると言ってましたが、もう『日本一』でいい。かっこいいと思います」

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「社会人になって初めての涙です」