保険金の不正請求などの不祥事が次々と明らかになったビッグモーター。社員らが不正に手を染めてしまった背景には、ある集団心理が働いていた可能性があるという。AERA 2023年12月11日号より。
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関東財務局は11月24日、中古車販売大手ビッグモーター(BM)による保険金の不正請求問題で、BMとグループ会社の計3社について、損害保険代理店の登録を11月30日付で取り消す処分を出すという異例の事態となった。
自動車保険金水増し請求、街路樹に除草剤をまく……。不祥事が次々と明らかになったが、BMの社員たちは、なぜ不正行為に加担してしまったのだろうか。そこには、ある集団心理が働いた可能性がある。
人は集団になると、1人でいるときとは違う心理状態になる。周囲に合わせて列に並ぶ。何か行動するべきところを、周りに影響されて、つい見て見ぬふりをするといった具合だ。
関西地方のBMの店舗で働いていた元社員の男性は、取材に除草剤をまいた理由を語った。
「基本、営業の会社なので売り上げ、ノルマがすべて。営業成績が上がらないから、仕方なく会社のいうことを聞いて除草剤をまいたという感覚。やっていて『やばいことかな』と思いつつ、半分は営業成績がダメだから仕方ない。それより、どうやって1台でも売るかということに頭が支配されていた」
元社員は続けて「なかには、除草剤どころか、土をスコップで掘り返し植木を引っこ抜いてという営業店もあった。その時は、違法というより、営業成績や幹部の巡視、見回りが怖くて周りが見えていない」とも語った。
この元社員は、法律違反より、成績や幹部の方が怖いと思うほど追い込まれていた。
産業医の大室正志さんは言う。
「BMの人たちは、安全や法律よりも、ノルマを優先する『集団欠陥』という心理状態になっていたのだと思います」
集団欠陥とは、視野が狭まった環境下で、過度なプレッシャーがかかると、本来大切なことではなく、その場のプレッシャーの方を優先するようになること。集団心理の一つとされる。
「ルールより、場の空気を重視することです」(大室さん)