そんな環境のなかで、到底達成できないノルマや、不合理な命令が引き金になって、適正な判断ができなくなってしまう。
「除草剤をまかないと飛ばされるというプレッシャー、売り上げが給料に直結するということが、不正を正当化する動機になります」と、大室さんは指摘する。
企業風土の改善には仕組みを変える必要も
不祥事を引き起こす土壌、企業風土を改善するには、どうすればいいのだろうか。
「社員一人一人の心がけの問題ではありません。再発防止のためには会社の仕組みを変えなければなりません」と大室さん。
調査報告書によると、BMでは、そもそも取締役会は開かれておらず、個々の役員の判断で社長に報告・相談していた。
こうした状況について、大室さんは「外部の人間が、おかしいと指摘する機会を作る必要があります。外資系企業では、社長や管理職の権力が強い代わりに、コンプライアンス委員会のような社内でも独立した組織を設けていて、組織の緊張感を保っています」と話す。
ただ、日本の企業には「よそはよそ、うちはうち」という文化があり、企業に外部の目が入りづらい状況があるという。
大室さんに企業や組織内での集団心理に流されないために注意すべきポイントを教えてもらった。
大室さんは「仕事内容が、一般的なコンプライアンスからずれていませんか。視野狭窄にならないように、他社はどうしているか調べてはいかがでしょうか」とアドバイスする。さらに、周りの人や、同僚に「いつもの自分と違うところはないか」と、聞いてみるのも有効だ。気になることがあれば、産業医に面談するのも手だという。(編集部・井上有紀子/今西憲之)
※AERA 2023年12月11日号より抜粋