1日8時間労働で週5日のフルタイム勤務、ときには残業して働くといった、これまでの“普通”の価値観は過去のものになっているのだろうか。冒頭の男性も動画投稿主の米国女性も20代前半の若者。1990年代中ごろから2010年代前半に生まれた、いわゆるZ世代だ。彼らにとっての「働く」とは何か。働きがいをどこに見いだしているのだろうか。
企業の人事問題解決や、事業・戦略の推進を支援するリクルートマネジメントソリューションズは、2023年2~4月に新入社員導入研修などを開催し、その受講者を対象に「新入社員意識調査2023」を行った。
個人の幸せも大切に
仕事をするうえで重視したいことのトップは「自身の成長」、次いで「社会への貢献」「やることの意味を強く感じられるか」が上位。「競争に勝つ、ナンバーワンになる」は前年に続いて最下位だった。同社HRD統括部主任研究員の桑原正義さんはこう分析する。
「Z世代の若者は企業や組織の成長だけではなく、個人の幸せも大切にしたいと考えます。経済的な成長イコール幸福とは限らないという価値観を持っていると言えます」
背景には日本経済のこの30年の停滞がある。経済成長が続いた1990年代前半まで、社会における成功は「組織中心の世界」の中での話だった。個を抑えてでも組織を重視することで企業は成長し、個人としても給与アップ、昇進など成功をつかみ取った。そのころ、栄養ドリンクCMのキャッチフレーズ「24時間戦えますか」が大流行。社会に出れば“企業戦士”として長時間労働もいとわない姿勢がもてはやされた。
その後、経済は停滞し、従来の組織優先のやり方は限界なのではないかと疑問を持つ人が生まれ始める。個と組織のバランスをどう取ればいいのかの解決策が見いだせず、若者と上司の世代でギャップが生まれた。
「Z世代は経済成長を知らない90年代後半に生まれているので、過去のモデルの成功体験を知らない。新しいやり方を試行錯誤している社会の中で、『無理に組織側の考えにとどまる必要はない』『自分に合う方を選択しよう』と考える人がこの世代では増えています」(桑原さん)