一方、ラジオ第1はテレビと同様、ニュースを中心とした情報番組を毎朝、流している。お出かけ前の忙しい時間帯の「王道」とでも言えようか……。
もちろん、一本化で個々の番組がどうなるかは何も決まっていないし、NHKの稲葉延雄会長はそのことについて会見で「消費者の利便性を損なわないようにしたい」と述べている。
しかし、普通に考えると、やはり朝はニュースが中心になるのでは、と思ってしまう。「塊」として語学番組が朝の時間帯を占めるとは考えにくいし、例えば人気番組だけがぽつぽつと「孤島」のように、情報番組の間を縫って放送されるとも思えない。となると、今、ラジオ第2で朝、語学学習している人たちの「朝」は、どうなってしまうのか。
若い世代はネット利用
実は記者も、中高年の「学び直し」の一環として、阿部野さんと同様、「ラジオ英会話」を聞いている。始めた動機は単純で、中学生時代にラジオで英語番組を学んだ原体験があり、「語学を勉強するなら、まずはNHKラジオ」とでもいう思い込みがあったのだ。
だからこそ一本化に衝撃を受けた。「多くのリスナーが困るのでは」との連想が働いたのだ。しかし、取材を始めるとどうも様子が違う。衝撃を受けている人が……見つからない。冒頭の阿部野さんも、
「仕方がないと思いますよ。時代とともに編成が変わるのは受け入れるしかありません」
すでにご存じな方のほうが多いだろう。NHKの語学番組はインターネットへの進出で、とっくの昔に毎日、定時に聞く必要がなくなっている。
当日の聞き逃しは、朝の放送終了後、ネットラジオの「NHKラジオ らじるらじる」で聞くことができる。ネット上の「NHKゴガク」のラジオストリーミングでは、1週間遅れだが、前週の放送を1週間いつでも聞くことができる。また、同ゴガクの番組ホームページでは、過去2カ月分の放送が聞けるようになっている。
「TOEIC特急シリーズ」の名物著者として知られる神田外語大学の神崎正哉准教授が言う。
「私は大学時代に『ラジオ英語会話』を聞いていましたが、その時とは学習環境が天と地ほど違っています。今はネットのストリーミングを聞いている人が多いのだと思います。若い人が英語を勉強しようとなった時に、手段として『ラジオ』はなかなか上がってきませんよ」
(編集部・首藤由之)
※AERA 2023年12月11日号より抜粋