やがて、さまざまな生産者の方との出会いにも恵まれ、気づくとその時期ならではの素材を使ったお菓子を作るようになっていました。旬の素材は風味も格別で、お菓子のおいしさを引き立ててくれます。 実は10年ほど前に畑を借りていましたが、実際携わってみるととても大変で、お菓子作りをしながら続けることはできませんでした。そんな経験もあり、おいしい素材を届けてくれる生産者の方を尊敬する気持ちが一層強くなり、応援したいと思うようになりました。

bion には紅茶やハーブティなどお茶を使ったお菓子があります。なかでも、日本茶の茶葉を材料に加えたお菓子をいろいろと作るようになったのは、数年前に熊本県のtaishojiさんで開催されていたお茶市で、日本茶のおいしさを再確認したことがきっかけです。そして、この頃からお茶農家さんをはじめ、野菜や果物やさまざまな生産者さんとのご縁も新たに広がり、今につながっています。
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幼いころも、お菓子作りが仕事になった今も変わらないのは、新しいお菓子と出合った時の「ときめき」。まだ見ぬお菓子との出合いに、日々恋い焦がれているという。レシピ集には、「はじめてのお菓子との出合いが読者にもありますように」とも記している。惜しげもなくレシピを公開するのは、寺井さん流の「出合いの演出」なのだ。

(構成 生活・文化編集部 森 香織)