AERA 2023年12月4日号より

「2、3年に1回、大腸カメラ検査をやっておけば、大腸がんで死ぬことはない、ということでしょうか?」

「そうです。カメラで実際に大腸を見ればわかるものなので、定期的に内視鏡検査を受けていれば、大腸がんで亡くなることはありません」

大腸がん検診では早期がんの40%は発見できない

 自覚症状がないのに、大腸カメラ検査を受けるのは面倒だ。検査当日の朝食、昼食は抜き。検査の4時間以上前から、2リットルもの下剤を飲まなければいけないし、意図的に下痢の状態を作るのはとても不快だ。だが、その面倒臭い検査を受けておけば、大腸がんで死ぬことはない。大腸カメラ検査は、近所の消化器内科で受けられるし、費用はケースによるが1万円ほどで済む。鎮静剤を使えば、10分から15分、寝ているうちに検査が終わる。痛みなどは一切ない。

 手術前の大学病院での検査のほうが、よっぽど大変だった。造影剤を入れてのCTは、体内の温度が微妙に熱くなり、違和感しかない。内科、歯科、麻酔科ほか、説明を受けるだけでも時間を取られるし、両腕に針を突き刺して点滴を受けるのも苦痛。血液検査なども合わせると、何度注射をしたことか。とにかく、注射は痛いから嫌いだ。

 ちなみに、いちばん嫌だったのは、手術後、便をする度にナースコールを押して、看護師に便の状態を確認してもらうことだった。これが退院するまで続いた。羞恥心など早々に捨て去らなければいけない。

 そう考えると、定期的に大腸カメラ検査を受けるメリットは非常に大きい。もしポリープが見つかれば検査中に切除してもらえるし、何もなければ「当分、大腸がんで死ぬことはない」というお墨付きをもらえる。

 なお、便潜血検査で早期がんを正しく陽性と判断できる確率は約60%という厚労省のデータがある。逆に考えれば、大腸がん検診では早期がんの40%は発見できないということになる。筆者が何年も検診でひっかからなかったのもそのためだろう。

 最後に。大腸がんになって学んだことの一つが、「食べたいものを食べられないのは、人生の楽しみを奪われるようなもの」ということだった。食生活は消化のいいものに限定され、刺激物はNG。コーヒーや紅茶は飲めないし、香辛料を使った料理、カレーなども禁止だ。そんな事態にならないためにも、大腸カメラ検査を定期的に受けてほしいと切に願う。

 今、健康状態に問題がなければ、仮にがんが見つかっても早期である可能性が高い。便秘や下痢、腹痛などがあれば、ちょっとした不調と思わず、とにかく、大腸カメラ検査を受けてみよう。それだけで、大腸がんで死ぬ可能性を大幅に下げることができるのだ。(ライター・谷口由記)

AERA 2023年12月4日号

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