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 大腸がん発覚からわずか5カ月の早過ぎる死──。10月29日、世界的ロックバンドX JAPANのベーシスト、HEATHさんが55歳で亡くなった。現在、日本での部位別がん罹患数では1位、死亡数も男性2位・女性1位と、いつ自分の身に降りかかるかわからないのが大腸がんだ。毎年がん検診を受けていたにもかかわらず、突然ステージ3bを宣告され、死を覚悟した記者の体験に基づく「死なない」ためのルポ。AERA2023年12月4日号より。

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 10月29日、ロックバンド「X JAPAN」のベーシスト・HEATHさんが大腸がんのため亡くなった。55歳だった。今年の6月にがんが見つかり、10月に容体が急変したという。闘病生活はわずか5カ月。「大腸がんは、けっして進行が早いがんではない」(大学病院内科医)のだが、自覚症状が少ないため、発見が遅れるケースが多い。

 国立がん研究センターの「2019年の全国がん登録」によると、罹患数は、男性、女性ともに大腸がんが2位で、総数は1位。大腸がんに罹患する確率は男性が10人に1人、女性が12人に1人だ。厚生労働省によれば、「特に50歳以降の増加が著しい」という。また、同省が22年9月に公表した大腸がんの死亡数は、男性2位、女性1位。近年、日本人にとってもっとも身近ながんといえる。

 じつは筆者も、HEATHさんと同じく今年6月、大腸がんが見つかり、大学病院で「ステージ3b」と宣告された。

AERA 2023年12月4日号より

突然のステージ3宣告

「大腸に3センチほどの大きな腫瘍があります。こんなに大きながんが、年に一度の『便潜血検査』(大腸がん検診)で、なぜ、見つからなかったのでしょう? 少なくとも3年は便の検査をスルーしてしまったと思われます」

 近所の消化器内科医は、そう言って首を傾げた。6月、夕食を摂ったあとに、血便が出た。水のように血が流れたので、少し恐怖を感じ、近くの病院で大腸内視鏡(大腸カメラ)検査を受けたところ、突然、大腸がんを宣告されたのだ。この時点ではステージは不明だったが、体調が悪いわけではなく、一度の血便以外に思い当たる症状はなかった。がんと宣告されても、現実感がまったくなかった。

 その後、大腸カメラの画像と紹介状を持って訪れた大学病院でCTなどの検査を受けると、外科医から、早期ではなく、進行した状態のがんだと診断された。

「現時点での判断としては、ステージ3b。手術してみないとわからないが、転移している可能性もあり、その場合はステージ4。手術で大腸を25センチほど切ることになります。腹腔鏡手術か、ロボット支援手術(ダヴィンチ)、どちらを選んでもらっても構いません」

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