AERA 2023年12月4日号より

 ステージ3は、リンパ節転移がある状態で、5年相対生存率は77.3%。ステージ4だと、肺や肝臓への転移、腹膜播種がある状態で、同生存率はなんと18.7%まで下がる。

 ここで初めて、自分ががん患者だと自覚した。最悪の場合、数年で亡くなる可能性があることについては、意外とすんなり受け入れることができた。死ぬのはいいが、その前に、私物の整理、サブスクなどの停止、保険の確認など、人生をリセットするために時間を費やさなければいけないことにうんざりした。また、人生でやり残したことがないか真剣に考えたが、何もなかった。いつ死んでも後悔がないことを確認できたのはよかった。

 一方、目の前にある現実として、どちらの手術を受けるか、そして手術後に、抗がん剤治療を受けるか、免疫療法を選ぶか、判断しなければならない。そんなことを考えていたら、担当の外科医が、何かのついでのように言った。

「そういえば、最初に(近所の消化器内科で)大腸カメラを入れたとき、病理検査はしましたか? していないのであれば、治療方針は99.9%変わりませんが、念のために内科でも検査しておきましょう」

 大腸を切る前に、がんの状態を再度確認しておこうということのようだ。

大腸カメラで運命が変わる

 この一手が運命を変えた。大学病院の内科医による大腸カメラ検査の結果、「内視鏡手術で治療が可能かもしれない。ただ、がんが大きいので、手術は難しい部類に入ります。もし、内視鏡でがんが切除できなかったら、外科手術で切りましょう」ということになった。

 内視鏡による手術は、5時間半に及んだ。がんが事前の予想より大きく、5センチもあった。目に見える範囲のがんは切除されたが、病理検査をしないと、転移しているかどうかは判断できないという。

 2週間後に病理検査の結果が出て、がんはごく初期の「ステージ1」だと判明した。腸を切らなくて済んだことは、とても喜ばしいことだが、死を覚悟させられた「ステージ3b」という外科医の判断は何だったのか? 内科医に説明を求めた。

「3センチを超える大きさのがんであれば、リンパなどへの転移があると考えるのが一般的。腸を切って繋ぐことで、再発の確率を下げられるので、判断としては妥当です。むしろ、外科手術前に念のため内科で検査をする、という指示が好判断だったといえます」

 手術までに、がん関連の書籍を20冊ほど読んだ。インターネットの情報は、やたらと恐怖を煽る傾向にあったので、あまり見ないようにした。大腸がんと闘った坂本龍一や桑野信義の本は、心の持ち方として、とても参考になった。その情報をもとに、内科医に聞いてみた。

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