この法律の8条をじっくり読めば中国は現在の状況を「分裂」と認めておらず、台湾が独立を宣言したり、独立派が反対派を虐殺するとか、外国軍を引き込んで分裂を図る、などの「事変」が起きるようなことがない限り、将来の平和統一を目指して協議していく姿勢を示している。「反国家分裂法」の本質は「現状維持法」と思われる。
習近平主席は2022年10月の党大会で「我々は最大の誠意と最大の努力を尽くし平和的統一の未来を勝ち取るが、決して武力行使の放棄を約束せず、あらゆる必要な措置を取る選択肢を残す。その対象は外部勢力の干渉と、ごく少数の台独派による分裂活動に向けたものであり、広範な台湾同胞に向けたものでは決してない。祖国の完全統一は必ず実現しなければならず、必ず実現できる」と述べた。
「武力行使の放棄を約束しない」のは威嚇的に聞こえるが、考えてみればどの国の政府も国を分裂させようとする輩が蜂起すれば取り締まるのが当然で、武力を行使しないという「約束はしない」のは当たり前だ。もし日本でそのような事態が起きれば政府は自衛隊に「治安出動」を命じることができる(「自衛隊法」七十八条)。台湾でそのような事態が起きないためには統一でも独立でもない台湾の現状維持が妥当と考える。