アメリカの経済誌『フォーブス』の世界長者番付2023年版では10億ドル以上の資産家はアメリカの735人に次ぎ中国に562人(香港・マカオを含む)がいる。日本は39人だ。アメリカでは遺産1000万ドル以上を受けた人しか遺産税はかからず、中国は相続税がないから資本家の天国だ。

 世界最大の中国工商銀行はアメリカ本部をニューヨークのトランプタワーに置き、中国の対外純資産(貸し借りを合算)は香港を含み4.1兆ドル(574兆円)余で日本は3.6兆ドル(504兆円)余だ。一方アメリカは、最大の債務国で対外純債務が18兆ドル(2520兆円)を超える。第2の純債務国スペインの約9800億ドルの18.5倍に達する途方もない借金だ(いずれも2021年)。中国の証券取引所は上海と深センにあるが、上海だけでロンドン、東京をしのぐ取引額だ。

 こんな共産主義国があるわけがない。中国憲法には今も「社会主義」の原則が載っているが、これは古い看板が残ったような形で実際にはアメリカと一、二を争う巨大資本主義国だ。中国政府は「中国の制度は特色を持つ社会主義」と言うが、言い訳に聞こえる。日本が相当有力な防衛力を持ちながら「自衛隊は軍隊ではない」と苦しい弁解をしてきたのと似ている。日本、アメリカの反中国派は中国を「共産主義国」と言う。その方が恐ろしそうに聞こえるからだろうが、これは「日本は憲法9条があるから非武装国家だ」と言うに等しい。

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